成年後見制度についてとその問題点

成年後見制度について

何のための制度か

成年後見制度は、判断能力が不十分なために財産侵害を受けたり金銭管理で不利益を被らないように法律面や生活面で支援する制度。

判断能力が衰えている状態というのはどのような状態をいうのか。 法律で言うところの、「精神上の障害によって事理を弁識する能力がなくなったり、低下し」ていることが必要とされている。

判断能力とは、自分がこうしたら自分にどんなことが起きるか?どんな責任を負うのか?などを理解判断できる力。

Ex,100万円の羽毛布団を買う契約書に印鑑を押したら、100万円を支払わなければならないことを「理解する力」。その羽毛布団が必要かどうか「判断する力」。

自宅にを他人に無料で譲るという契約書に印鑑を押したら、自分の住む場所はなくなる。 違う場所に住む手続きをしなければならないし、お金ももらえない。ことを「理解する力」。

上記のようなことを理解する力を事理弁識能力という。

事理弁識能力の有無は、記憶力の有無だけでなく会話力•日常生活上の理解力•必要性の判断力などを総合的に判断して決まる。

ものを買えばお金を払うとか、貸したら返してもらう、お金を理由もなくあげないという当たり前のことが理解できないことによって、財産を搾取されるのを防ぐための制度である。

成年後見制度は、平成12年にノーマライゼーションの理念のもとに介護保険とともに創設された。

以前は判断能力が不十分とされた場合には「禁治産者」として金銭管理を制限し戸籍にも記載された。 社会的な偏見や差別を生む原因となっていた。

そのため、障害があっても家庭や地域社会で本人の財産と権利が守られながら当たり前の生活が送れるようにできた制度というわけ。

成年後見制度を利用すると、利用する本人に成年後見人がつく。

後見人のできることについては後述する

対象者は誰か

精神障害や知的障害、認知症などの判断能力が不十分な人。

自分で判断して法律行為ができない人。

どんな時に使うのか

どのような時に必要になるのか。

調べてみたところ、

本人の預貯金の管理•解約、身上監護、不動産の処分、相続手続き。

★本人の預貯金の管理•解約 例えば、親が認知症になった場合。 •本人の施設入所のために家族が定期預金などを解約しようとして、本人と一緒に銀行に出向いたが認知症ということが判明して口座が凍結となるケース。

•本人が銀行に出向いた際に、銀行側が本人に対して意思決定能力が著しく欠けていて認知症っぽい状態になっていることに気づいて口座を凍結するケース。

口座が凍結されてしまうと、家族であっても口座名義人である本人の財産を使うことはできなくなってしまう。

★身上監護 •本人が平穏な暮らしが送れるよう、介護保険や病院などの「身の上」の手続きをする。 •介護保険の申請手続きや、施設入所の際の契約行為、住居の確保に関する手続き、病院に入院するときの手続きなど。

あくまで法律行為を行うのであり、日常の買い物や直接の介護は含まれない。

★不動産の売却 ここでも、親が認知症になってしまったときを例に挙げると、

「売却する」という意思が確認できれば、子どもが親を代行して手続きはできる。 親が施設に入る場合に、不動産を売却する時には親の意思で子どもが代行する方がスムーズに手続きは進むだろう。

不動産の売却にはしっかりした「意思確認」が必要。

その発言や行動から司法書士がそれに欠けていると判断した場合、決済をストップすることができる。

本人に判断能力がない場合は、財産の処分ができなくなってしまうのだ。

★相続の問題

ここでもわかりやすく認知症の場合。

遺産分割協議は法律行為であり、意思決定能力を欠いている場合行うことができない。

相続人に認知症の人がいると、

遺産分割ができない。

一般的に相続手続きでは相続する人全員で話し合って遺産をどう分けるか決める。 法律で決まっている割合だと、相続する人同士の意思が反映されないので、納得がいかない場合がある。自分たちの好きなように決めたいと思うのが当然。

しかし、判断能力がない人がいると遺産分割ができないので自由な分け方ができなくなる。

それ以外にも、

本来なら税理士が相続税がかからない有利な遺産分割協議内容を決めて税務署へ申告するが、それができないために選択肢が狭まってしまう。

また、不動産所有者が相続人共有となってしまう。 不動産はなるべく権利関係を複雑にしない方がよいとされている。

このように見てくると、自分たちがいかに契約行為に基づいた社会生活を送っているのかがわかる。

同時に、自分で判断できないことはこの高度な現代において限りなく制限のある生活を強いられかねない。

成年後見制度の問題点

後見人の申し立てを行う場合、申し立てを行なった家族の希望通り後見人が選ばれるとは限らない。 家庭裁判所が不適任と判断した場合は、専門職後見人が選ばれることになる。

幸いにして子どもが選任されたとしても、多くの場合は成年後見監督人(弁護士や司法書士など)が付くこととなる。

不正に本人の財産が使い込まれることを防ぐため、最近では専門後見人が選ばれることが一般的になっってきているという。

「子どもが選任されないならこの制度は使わない」とか「成年後見監督人は不要です」などの主張は認められない。

誰が選ばれるかは申立後1〜2gヶ月後に届く「審判書」に書かれている。 「審判書」を見るまでは、誰が後見人になるかわからないのだ。

専門職後見人や成年後見監督人が付くと何が問題なのか。

もっともネックとなるのが報酬が発生するという点。 月に2、3万、年額24万程度の支払いが生じてしまう。

また、専門職後見人が選ばれてしまうと、家族であっても後見を受けている本人の財産のチェックができなくなってしまう。

必要な費用だけを与えられることとなり、それ以外の費用は都度、支払いを認めてもらわなければならなくなる。

専門職後見人や監督人との相性が悪い場合も、利用者側からは変えることができない。

柔軟性がなく、不便な点も多くある。

制度を利用する前に、本当に成年後見制度を使う必要があるか、ほかに代替手段はないかと、よく検討してみる必要があるだろう。

一番身近な相談窓口として、社会福祉協議会地域包括支援センター、市役所などが挙げられるがそこでは制度を利用する前提で最初から話が進んでしまいかねない。

相談する場所を間違えないようにしたい。

本人とその家族が、幸せに普通に社会で生活をおくること。 本人の財産が、正当に守られること。

安心して年取るのって決して楽じゃあないわ。